「私が経験したウルトラマラソン10の失敗と学び」シリーズ/連載形式(全3回)第1回

実体験談

こんにちは、ラン歴12年の@hiroki.mitsunaga (PB 3:09:28)、通称「みつ」です。

これまでのウルトラマラソンで経験した失敗や後悔、そこから得た学びを、10のテーマにまとめました。

「私が経験したウルトラマラソン10の失敗と学び」は全3回の連載形式。

初めてウルトラに挑戦する方や、まだ経験の浅い方に、少しでも役立つヒントが届けられたらと思っています。

文章は、ちょっと笑えるけど本気。自分自身と向き合った記録でもあります。

この記事を執筆している筆者の簡単なプロフィールになります。

現在の目標はマラソンサブ3。

アシックス大好きランナーでもあります。

  • 34歳(はじめは10km走れない状態)からランニングを始め現在46歳
  • 初フルマラソン5:35:29(2015) 名古屋アドベンチャーマラソン
  • フルマラソン3:09:28(2025) 京都マラソン
  • ハーフマラソン1:27:20(2024)東京レガシ―ハーフマラソン
  • 10km39:27(2023) 刈谷市かきつばたマラソン
  • 100kmトレイルランニング完走24:05:29(2024)志賀高原100
  • 100kmウルトラマラソン完走11:09:47(2025)飛騨高山
  • 118kmウルトラマラソン完走14:32:45(2023)チャレンジ富士五湖
  • 100マイルトレイルランニング完走44:15:44(2024) Mt.FUJI100
チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン2025 100km
筆者 Mt.FUJI100 2024 100マイル

第1回:「水切れ、エネルギー切れ、そして心の電池切れ」

〜私が経験したウルトラマラソン10の失敗と学び〜


■ 1.はじめに:失敗の国からこんにちは

よく「失敗は成功のもと」って言うけど、正直、失敗してる最中はそんな気持ちになれない。

ウルトラマラソンでは特にそう。一歩も動けなくなるような辛さの中で、立ち上がる元気も出ない。ただその場に座って、呼吸を整えるしかないときがある。

ウルトラとは、42.195kmのマラソンを超える距離を走る競技のことである。つまり正気の沙汰ではない。でもなぜか走ってしまうし、完走したあとは「もう二度とやるか!」と叫んだ口でエントリーボタンをポチっているから人間って怖い。
そしてその過程には、数えきれない失敗が詰まっている。今回はその中から10個を選抜し、3回にわたってお届けする予定です。

第1回は、命にかかわるやつ、つまり「補給」と「水分」と「心」について。どれかひとつ欠けても、ウルトラは成り立たない。っていうか、倒れる。


■ 2.失敗①:補給を舐めていた(エネルギー切れ)

わたしが初めて100kmを走ったとき、60kmを過ぎたあたりで脚が急に止まった。いや、正確には脚は動いているのに、前に進んでいる気がしなかったのだ。動く歩道を逆方向に全力で走ってるような気分。足はバタバタしてるのに、景色が一ミリも動かない。

原因ははっきりしていた。エネルギー切れ、つまり“ガス欠”である。
スタート前に摂ったジェル1個とカステラ、30km地点でバナナ半分。あとは「そのうち食べよう」と思っていたが、用意していたジェルはずっとポケットの中。エイドでのんきに笑いながら水やスポドリだけ飲んで、胃が重くなるのを恐れて補給をスキップしたツケである。

80km地点のわたしはもうフラフラだった。自分がどういう状態なのか、このままレースを続けても大丈夫なのか…。もはや補給どころか意識がふわふわしていて、ついでに性格も少しだけ悪くなっていた気がする(人の背中を見て「こいつ速いな…ちぇっ」とか思っていた)。

◎ 学び:補給計画は命綱。しかも「自分に合ったやつ」を。

市販のジェルは種類も多く、味も効き方も人によって向き不向きがある。試走で試すべし。
あと、ジェルの持ち運び方をミスるとポーチ内が地獄絵図になる(これはまた別の失敗談)。エイドで食べられる補給と、自分が必ず摂りたい補給のW体制が安心。


■ 3.失敗②:水分摂取が甘かった(水切れ)

これはまた別のレース。40km過ぎのエイドを「まだ大丈夫」とスルーしたのが、運命の分かれ道だった。
その日は意外と暑く、湿度も高め。喉の渇きに気づいたときには、もう体のスイッチがひとつずつ落ちていくようだった。汗は出ているのに風が通らず、体温だけがじわじわ上がっていく、いやな感じ。

それでも意地で前に進んでいたわたしは、60km地点でようやく異変に気づく。
「口の中がパサパサ、ザラザラ」、「あれ、指先が痺れてる」――そんな感覚が現実にあるなんて、誰が教えてくれただろう。

エイドの水にすがるように手を伸ばしながら、心の中で何度も謝った。わたしの中の“水分たち”よ、ごめん、完全に甘く見てた。

◎ 学び:脱水は、走りを一気に“終了のお知らせ”にする

喉の渇きに気づいてからじゃ、だいたい手遅れ。
水は「飲もうかな?」じゃなく「気づいたら飲んでた」くらいがちょうどいい。
今では、まばたきするみたいに、意識せず水を口にするようにしている。


■ 4.失敗③:心の準備不足(メンタル崩壊)

さて、体がボロボロでもなんとかなることがある。けれど、心が折れるとほんとうにダメだ。
わたしは90kmを過ぎてから、「なんで走ってるんだっけ?」という哲学的な疑問が止まらなくなった。
走る理由が思い出せない。仕事もあるし。いや、明日は休みだけど。あさっての朝礼が目に浮かんだ。

「やめても誰も怒らないしなあ…」と立ち止まり、空を見上げたときの空の青さよ。あれはやばかった。
まるで「いいじゃん、やめちゃいなよ」と言っているようだった。

でも、そのときエイドで出会ったボランティアのおじさんが「あと10kmだよ! キロ8でもいける!」と声をかけてくれた。それで我に返った。
ああ、わたしは走りたくて来たんだ。きっかけはどうであれ、自分でここまで来たんだ、と。

◎ 学び:「走る理由」は、自分の中に持っておく

目標でもいいし、応援してくれる人の顔でもいい。
「やめたい」と思ったとき、それを思い出すだけで、一歩が出る。泣きながらだけど。


■ 小結:心・技・体より、補・水・魂


ウルトラマラソンに本当に必要なのは、「心・技・体」じゃなくて、**「補・水・魂(たましい)」**だと思う。


補給で燃料を満たし、水分で体を潤し、魂で自分を押す。
どれかが切れると、あっという間に終わりが近づく。
でも不思議なことに、壊れたあとに少しずつ、自分の中の何かが組み直されるような気もしている。

失敗を重ねて、それでもまた走る。
痛い目を見ても懲りずにまた走る。

おそらく前世は回遊魚か何かだったのだろう。そんな自分を「ばかだなあ」と笑いながら、ほんの少しだけ誇らしくも思う。

左上:富士五湖、右上:丹後、左下:野辺山、右下:飛騨高山

次回は、装備とトイレと道迷い。走ることより、走る「まわり」で何が起こるのか。お楽しみに。

ウルトラマラソンに興味がある方はこちらの記事もおすすめ

気になる記事がありましたらチェックしてみてください↓

コメント

タイトルとURLをコピーしました