みなさんこんにちは。
ラン歴13年のみつ (@hiroki.mitsunaga) が2026/6/14に開催された飛騨高山ウルトラマラソン100kmに参加してきました。
【目標はサブ10。】
去年、一昨年と高山で挑戦したけど、どちらも達成できず。(2024年は11時間41分38秒、2025年は11時間9分47分)
それでも今年は、念願だったフルマラソン・サブ3を達成。
これまで積み重ねてきた練習を信じ、「今年こそ決める。」という覚悟でスタートラインに立ちました。
しかし、この100kmは、想像をはるかに超える一日になります。
サブ10を目指した挑戦の記録。
そして、100kmの先で気づいた人とのつながりや挑戦することの意味。
そんな一日を、ありのままに綴りました。
レース内容をすぐに読みたい方は、「5.スタート」からご覧ください。
この記事を執筆している筆者の簡単なプロフィールになります。
現在の目標はウルトラサブ10。
アシックス大好きランナーでもあります。
- 34歳(はじめは10km走れない状態)からランニングを始め現在47歳
- 初フル5:35:29(2015) 名古屋アドベンチャーマラソン
- フル2:58:37(2026) にしおマラソン
- ハーフ1:23:51(2025) お伊勢さんマラソン
- 10km38:19(2026) 刈谷市かきつばたマラソン
- 100kmウルトラマラソン完走10:24:26(2025)チャレンジ富士五湖
- 100kmトレイルランニング完走24:05:29(2024)志賀高原100
- 100マイルトレイルランニング完走44:15:44(2024) Mt.FUJI100

結果

飛騨高山ウルトラマラソン100kmの結果になります。
記録 12:14:44
目標だったサブ10は、達成ならず。
三度目の挑戦。
今年こそは決める。
そう覚悟を持って臨んだだけに、悔しさは大きかったです。
「何が足りなかったんだろう。」
ゴールしたあとも、その答えを何度も考えた。
レースを振り返って最初に浮かんだのは、この二つ。
頑張りすぎた。
集中しすぎた。
タイムばかりを追い求め、周りの景色や仲間との時間を楽しむ余裕を失ってしまった。
実は、これは過去にも経験した反省点です。
それなのに、また同じことを繰り返してしまった。
それでも、この100kmは悔しさだけでは終わらなかった。
苦しい時に支えてくれた仲間。
応援してくれた皆さん。
道中で出会ったランナーやボランティアの方々。
たくさんの人の温かさに支えられて、自分の足でゴールへ帰ってくることができました。
やっぱりウルトラマラソンには、ドラマがある。
私は、そんなウルトラマラソンが好きなんだと思う。
サブ10は、また来年の宿題。
達成するまで、絶対に諦めません。
コース

飛騨高山ウルトラマラソン100kmは、前半と後半でまったく表情が変わるコースです。
まず50kmまでは、「ウォーミングアップ」くらいの気持ちで走るのがおすすめ。
ここで頑張りすぎると、後半に大きく響きます。
60kmから始まる千光寺の激坂は、高山名物ともいえる最大の難所。
無理に走ろうとせず、思い切って歩くくらいでちょうどいいです。
歩いていても十分きつい坂なので、体力を温存しましょう。
70km〜80kmは平坦基調だが、一直線に続くロードが想像以上にメンタルを削ってきます。
脚よりも心との勝負になる区間です。
そして90km手前には、最後の難所ともいえるラスボスの坂が待っています。
ここもかなり苦しいですが、この坂を登り切れば、大きな難所は終わりです。
あとはゴールを目指して、一歩ずつ進むだけ。
出発

今回は7人、飛騨狂走連合のみんなで高山へ向かった。
車に乗った瞬間から遠足気分。
お菓子を食べながら会話が弾み、車内は終始にぎやかだった。
毎年立ち寄る、ひるがの高原SA。
ここで食べるソフトクリームは、私の恒例行事。
「今年もこの季節がやって来た。」
そんなことを思いながら、甘さ控えめのアイスをしっかり味わった。


高山に着くとスーパーで買い出しを済ませ、「ちとせ」の焼きそばをテイクアウト。
そして一棟貸しのお宿へ。
前夜祭が始まる。
「乾杯!」
その一言で、一気にテンションが上がる。
私は家で仕込んできたパスタを振る舞った。
最後は、おそろいのTシャツに着替えて記念撮影。
仲間との団結力もさらに深まった。
明日はいよいよ、飛騨高山ウルトラマラソン。
どんな一日が待っているのだろう。
この時は、まだ誰も知らなかった。







当日の朝

午前3時。
宿を出発し、車に乗り込んで会場の飛騨ビッグアリーナへ向かった。
3時20分、会場に到着。
まだ夜明け前だというのに、会場はすでにたくさんのランナーで賑わっていた。
そして、あちこちで知り合いと再会する。
ひとこと、ふたこと。
何気ないやり取りだけど、不思議と気持ちが高まっていく。
やっぱり大会の朝は特別だ。
荷物を預け、スタート地点へ向かった。
今回の目標は、サブ10。
この日のために練習を積み重ねてきた。
去年も、一昨年も届かなかった壁。
だからこそ今年は、なんとしても達成したい。
そんな覚悟を持ってスタートラインに立った。
今回の作戦は、朝の涼しい時間帯に少し貯金を作ること。
イーブンペースで押し切る方法もあるが、昨年走った経験から、この作戦を試してみたかった。
果たして、この判断は正解なのか。
それとも——。
スタートまで残り3分。
仲間とグータッチを交わし、お互いの健闘を誓う。
緊張と期待が入り混じる。
いよいよ、100kmの長い旅が始まろうとしていた。








スタート~20km

4:30
スタート。
ついに、飛騨高山ウルトラマラソンが始まった。
この100kmの先にどんなドラマが待っているのだろう。
胸に刻んだ目標は、サブ10(10時間切り)。
「あとは楽しむだけ」
そう自分に言い聞かせながら、まみぃ、つばさくんと一緒にスタートラインを駆け出した。
スタート直後の空気は、何度味わっても特別だ。
体はまだ軽い。
アドレナリンが全身を巡り、自然と笑顔になる。
気温もちょうどいい。
暑すぎず、寒すぎず、この一日を走るには申し分ない朝だった。
朝焼け前の静かな高山を、仲間と笑いながら走る。
それだけで胸が満たされていく。

3.5km
飛騨高山といえばこの景色だ。
古い町並をレースで駆け抜けられるなんて、何度走っても贅沢すぎる。
さらさらと流れる用水路。
軒を連ねる出格子の町家。
まだ観光客の姿はなく、この時間だけはランナーだけの世界だった。
静けさに包まれた町を足音だけが響いていく。
「高山に来てよかった。」
そんな思いが自然と込み上げてきた。
やがて、まみぃとつばさくんは自分のペースで前へ。
入れ替わるように、かなさん、えいみちゃんと合流した。
二人も目標は最低サブ10。
同じゴールを目指す仲間が隣にいるだけで、本当に心強かった



第一エイドは立ち寄らずそのまま美女高原へ向かう。
見上げた空は一面の白。
遠くの山々も木々も深い霧に包まれ、まるで墨で描かれた水墨画のような景色が広がっていた。
レースはまだ始まったばかり。
焦る理由なんてひとつもない。
仲間と言葉を交わしながら、高山の朝をゆっくり味わっていた。
10km
51分25秒。
サブ10までの貯金は9分。
ここまでは、ほぼイメージどおりのペースだった。
平均ペースは5分09秒。
焦る必要もなく、無理をしている感覚もない。
この先は長い上り坂が待っている。
ペースが落ちることも計算済みだ。
目標は50km地点で15〜20分の貯金をつくること。
さて、思い描いたレース展開になるだろうか。


ふと前を見ると、山の稜線から朝日がゆっくりと顔を出してきた。
立ち込める霧。
田んぼに張られた水が朝日を映し、きらきらと光を返している。
目の前に広がる景色は、現実とは思えないほど幻想的だった。
こんな景色に出会えるのも、早朝から走るウルトラマラソンならではのご褒美だ。
体だけでなく、心まで満たされていく。
前方に、背中いっぱいに羽根が描かれたTシャツが見えた。
TRRのたかいさんだった。
少しだけ言葉を交わしながら並走する。
大会に来るたび、こうして久しぶりに再会できる仲間がいる。
同じ景色を眺め、同じ道を走れる。
それだけで、この大会に来た意味があるような気がした。


20km
1時間45分03秒。
サブ10までの貯金は15分。
理想どおりの展開だった。
暑さはまだそれほど感じない。
空気は心地よく、走るには申し分ないコンディション。
「頑張りすぎない。」
「リラックス、リラックス。」
そう自分に言い聞かせながら、大きく一度深呼吸をする。
肩の力がふっと抜けた。
100kmは、気合いだけで走り切れる距離ではない。
頑張り続ければ、どこかで必ず心も体も悲鳴を上げる。
だからこそ、楽しむことが大切だ。
景色を眺め、仲間と話し、自分の呼吸に耳を澄ませる。
そうやって100kmという長い旅を進んでいく。
心にそっと問いかける。
「今のペースでいい。」
「焦らなくて大丈夫。」
頭の中を整理すると、不思議なくらい気持ちが落ち着いていった。
ここまでは、すべてが順調。
サブ10に向けて、これ以上ないスタートを切ることができた。


20km~40km

25.9km
第1関門、道の駅ひだ朝日村が近づいてきた。
エイドへ入る少し手前で、うっちーさん、ゆうこさんを発見。
赤と青のバッテン柄のウェアは遠くからでもよく目立つ。
両手を大きく振ると、二人も笑顔で応えてくれた。
その一瞬で、不思議なくらい元気が湧いてくる。
エイドでは名物のよもぎうどんと火畑そばを、それぞれ二杯ずついただいた。
つるっと喉を通り、お腹へ吸い込まれていく。
「もう一杯いけそう。」
そう思えるくらい、おいしかった。
さあ、出発しよう。
そう足を踏み出した、その時だった。
「みつさーーーん!」
どこからか自分を呼ぶ声が聞こえた。
振り返ると、そこにはくみさん。
応援に来てくれているなんて、まったく知らなかったから思わず驚いた。
本当なら立ち止まって、ゆっくり会話をしたかった。
でも、あの時の頭の中はサブ10のことばかり。
「ありがとうー!」
そう叫ぶのが精いっぱいで、そのまま先へ進んでしまった。
今思うと、少し申し訳ない気持ちが残っている。
フルマラソンならタイムを優先するのもわかる。
でも、ウルトラマラソンは少し違う。
せっかく会えた仲間とは立ち止まって話し、応援してくれる人には、ちゃんと感謝を伝えたい。
私にとってウルトラマラソンは、タイムだけを追いかける大会ではない。
人との出会いや触れ合いも、この大会の大きな魅力だと思っている。
だけど今回は、最初から決めていたことがあった。
脚を止めないこと。
写真を撮りすぎないこと。
その約束を守るため、心苦しさを抱えたまま、もう一度前を向いた。



29km
少しずつ坂が険しくなってきた。
走れないほどではない。
けれど、じわじわと脚に負担が積み重なっていく。
周りには歩き始めるランナーの姿も見える。
それでも、ここは走る。
歩幅を小さく。
時計は見ない。
大切なのはペースではなく、余裕を残すこと。
今の力を保ったまま、呼吸が乱れない強さで淡々と進んでいく。
まだ29km。
100kmの旅は、始まったばかりだ。
「頑張らない。」
焦る気持ちを抑えるように、心の中で何度もつぶやく。
自分の脳に、静かにメッセージを送り続けた。
30km
2時間39分00秒。
サブ10までの貯金は21分。
予定より少し速いペースだった。
「このままで大丈夫だろうか。」
そんな考えが頭をよぎる。
それでも答えはすぐに出た。
このまま行こう。
それが吉と出るのか、それとも凶と出るのか。
答えは、まだ誰にもわからない。
33kmを過ぎると、坂の傾斜が一段と厳しくなった。
「あれ、こんなにきつかったっけ。」
思わず弱音が漏れる。
上りが苦手な私は、後ろから来るランナーに次々と抜かれていく。
でも、大丈夫。
気にしない。
上りが弱いのは、今に始まったことじゃない。
人と比べる必要なんてない。
自分のペースで、一歩ずつ。
淡々と坂を上っていった。
35.6km
美女高原へ向かう途中、キャッスルさんの姿が目に飛び込んできた。
「えっ、こんなところで!」
思わず笑顔になる。
どうやら背中の文字を読んでくれたらしい。
「オカヤマ、ファイトーーー!」
力いっぱいの声援が飛んできた。
実は正しくは**「オカノヤマ」**。
真ん中の「ノ」を花のマークにしているので、「オカヤマ」と読まれることが本当に多い。
でも、それはいつものこと。
レース中、一度も「オカノヤマ」と呼ばれたことがないくらいだから、もう慣れっこだ。
思わず笑いながら、その声援を力に変えて進んだ。



ここからはコース最高地点、標高1010mを目指す長い上りが始まる。
走るべきか。
それとも歩くべきか。
頭の中で何度も自問自答した。
周りを見れば、走り続ける人が多い。
もちろん歩いている人もいる。
スタート前は、「どんなに遅くても走り切ろう」と考えていた。
でも、実際に走ってみると想像以上に坂はきつかった。
一度、目を閉じる。
そして、自分の心に問いかける。
「どうする?」
静かに返ってきた答えは、とてもシンプルだった。
「まだ先は長い。無理はいかん。」
その声を信じることにした。
「甘い。」
そう思う人もいるかもしれない。
それでも私は、意地を張る場面ではないと判断した。
少し歩き、呼吸を整え、また走る。
それを繰り返しながら、一歩一歩、高度を上げていく。
やがて、コース最高地点の看板が見えた。
ただの看板。
それなのに、胸の奥から大きな達成感が湧き上がってきた。
ウルトラマラソンは、とにかく長い。
だからこそ、小さな達成感を積み重ねることが大切なのだ。
きれいな景色。
仲間との再会。
応援の声。
一枚の看板。
そんな何気ない出来事に喜びを見つけられる人ほど、この100kmを楽しめる。
苦しいのは当たり前。
でも、「楽しい」がなければ、ウルトラマラソンはただ苦しいだけの競技になってしまう。
楽しいを探す。
楽しいを感じる。
楽しいを味わう。
それこそが、私にとってのウルトラマラソンの醍醐味なのだ。


40km
3時間40分40秒。
サブ10までの貯金は19分。
去年のこの地点では、貯金はわずか5分だった。
それを思えば、今年は十分すぎるほど順調だ。
ここまでは、思い描いたレースができている。
「大丈夫。」
「絶対できる。」
静かに自分に言い聞かせる。
最後に信じられるのは、ここまで積み重ねてきた練習と、自分自身だけ。
そう信じて、50kmの折り返しへ向かった。

40km~60km

40kmを過ぎると、待ちに待った長い下りが始まった。
ここで気をつけたいのは、スピードではなく脚へのダメージ。
着地はできるだけやさしく。
ブレーキをかけすぎず、脚に衝撃をため込まないよう意識する。
ロードは上りより下りのほうが得意だ。
余計な力を抜き、できるだけ「無」の状態で走る。
風に身を任せるように、坂を下っていった。
43km
前方に立つ一人の姿が目に入る。
「あっ、あの方は。」
遠くからでもすぐにわかった。
毎年応援に来てくれる、ふかつさんだった。
「みつさん!」
力強い声とともに、ようかんを差し出してくれる。
本当にありがたい。
このタイミングは、ちょうどフルマラソンを越えたあたり。
まだ笑顔で応えられる余裕があった。
ほんの数秒のやり取りなのに、不思議なくらい元気が湧いてくる。
人との触れ合いには、力がある。
「よし、また頑張ろう。」
自然とそんな気持ちになれた。


しばらく進むと、前方にエイドが見えてきた。
「何を補給しようかな。」
そんなことを考えていると、今度は、んたろーさんとみほこさんを発見。
二人と笑顔でハイタッチを交わす。
「がんばれー!」
「がんばれー!」
元気いっぱいの声援が飛んでくる。
その時だった。
ふと、みほこさんの手元に目が留まる。
んたろーさんが作ってくれたうちわだ。
そこに書かれていた文字は――
「みつ、かっこいい」
うれしいなー。
ポップな文字で書かれたそのうちわは、まるでアイドルの応援グッズのよう。
なんというサプライズ。
一気にテンションが上がった。
応援の力は、本当にすごい。
さっきまで感じていた疲れが、ふっと軽くなる。
「ありがとうーーー!」
大きく手を振って感謝を伝え、笑顔のままエイドへ向かった。



エイドに着くとまずはコーラを一杯。
「くぅーーーーー。」
体に染み渡る。
続いて、頭からたっぷりと被り水。
「ふぅーーーーー。」
思わず声が漏れる。
生き返った。
空は快晴というほどではなかったけど、体にも頭にも熱は確実にたまっていた。
もう一度、水を両腕へ。
そして、頭から。
「あぁーーー、気持ちいい。」
その爽快感は、まるでサウナのあとに入る水風呂のようだった。
49km
坂を下っていると、見慣れた赤と青のバッテン柄のウェアが再び目に飛び込んできた。
「あっ、うっちーさんだ。」
あのウェアは遠くからでもすぐにわかる。
隣には、ゆうこさんの姿もあった。
「これ、食べていく?」
手渡された紙コップの中には、みかんの缶詰。
そして、ひんやり冷えた炭酸が注がれていた。
「いただきます。」
口に運ぶと、シュワッと弾ける炭酸。
甘いみかんとの相性が抜群で、疲れた体に染み渡っていく。
「ごちそうさまでした。」
ほんの数口なのに、体だけでなく心まで元気をもらえた。
そのすぐ隣には、もう一つの私設エイド。
視線を向けると、大きなウサギのかぶり物をした人が立っている。
じゅんさんだ。
この人も、一目見ればすぐにわかる。
「食べていく?」
目の前には、色とりどりのフルーツがきれいに並んでいた。
その光景は、まるで天国。
ランナーが今、本当に欲しいものをよくわかっている。
どれもおいしそうだったが、その中からスイカを一切れいただく。
「あー、うまい。」
そういえば、今年初めて食べるスイカだったかもしれない。
冷たくて、みずみずしくて、体中に染み渡る。
ただただ、感謝しかなかった。
今回はサブ10を狙うと決めていた。
だから、補給をして、お礼を伝えて、ほんの少し言葉を交わしただけですぐに走り出した。
本当は、うっちーさんとも、ゆうこさんとも、じゅんさんとも、一緒に写真を撮りたかった。
もう少しゆっくり話もしたかった。
でも、この時の私は、そのすべてをゴールのあとに取っておこうと思っていた。
「サブ10は、今回で決める。」
その思いだけを胸に、50kmの折り返しへ向かって走り続けた。
そして心の中で、もう一つ誓った。
次こそは、応援に来てくれた仲間と、ゆっくり写真を撮って、たくさん話そう。
その時間もまた、ウルトラマラソンの大切な楽しみなのだから。

50km
4時間39分35秒。
サブ10までの貯金は20分。
50km地点は、15〜20分の貯金で通過する。
そう描いていたプランどおりだった。
ここまでは、ほぼ完璧なレース運び。
大きなトラブルもなく、予定どおりに進められている。
それでも、一つだけ率直に思ったことがあった。
「こんなに頑張っても、貯金は20分か。」
決して悲観したわけではない。
ただ、サブ10という壁の高さを改めて実感した。
100kmを10時間以内で走ることは、やっぱり簡単じゃない。
少しでも気を抜けば、その20分はあっという間に消えてしまう。
だからこそ、ここからが本当の勝負なのだ。
残り50km。
数字だけ見れば折り返し。
でも、ウルトラマラソンではここからがスタートだ。
脚の疲労は少しずつ積み重なり、暑さも増してくる。
体だけではなく、心も試される時間が始まる。
「まだ半分か……。」
ふと、その言葉が頭をよぎった。
100kmという距離の長さに、一瞬だけ心が揺らぐ。
でも、立ち止まるわけにはいかない。
「大丈夫。」
そう自分に言い聞かせる。
ここまで積み重ねてきた練習を信じるしかない。
ここからが、サブ10への本当のスタートライン。
残り50km。
いよいよ、本当の戦いが始まる。



54km
丹生川トンネルへ入る。
外の光が遮られ、ひんやりとした空気が体を包む。
暑さから解放される。
その数分間が心地いい。
トンネルの中では、自分の足音だけが響く。
規則正しく響くその音を聞きながら、自分の体と向き合った。
疲れはある。
それでも、まだ脚は動いている。
もうすぐ丹生川エイドだ。
遠くからにぎやかな声が聞こえてくる。
一歩進むごとに、その歓声は大きくなる。
カーブを曲がると、たくさんの応援の人たちが見えた。
あつしさん。
くみさん。
いとうさん。
「がんばれー!」
その一言が、胸にまっすぐ届く。
何度聞いても、応援の力は偉大だ。




56.7km
第3関門、丹生川支所に到着。
暑さもあり、胃には少しずつ疲れが出始めていた。
このエイドには名物の飛騨牛がある。
毎年、楽しみにしている一品だ。
でも今年は、決めていた。
飛騨牛は食べない。
おいしいのは間違いない。
けれど、あの脂を今の胃は受け入れられそうになかった。
もし食べたら、そこで終わる。
そんな予感がしていた。
ジェルはこまめに補給していた。
でも燃費の悪い私には、それだけでは足りない。
ここで食べなければ、あとがもたない。
そう判断し、トマトそうめんを三杯。
みたらし団子を二本。
味を楽しむ余裕はないが、とにかく体にエネルギーを入れこむ。
「もっとゆっくり味わいたかったな。」
そんな思いだけが、少し残った。
補給を終えると、今度はミスト扇風機の前へ。
冷たい風が全身を包む。
「あーーーーーー。」
思わず声が漏れた。
気持ちいい。
気持ちよすぎる。
本当なら、すぐに出発しなければならない。
それなのに脚が動かない。
「あと少しだけ。」
「もう少しだけ。」
そう自分に言い訳をしながら、極楽の時間を味わっていた。
すると頭のどこかで、もう一人の自分が言う。
「おいおい、サブ10を狙ってるんじゃないのか?」
その声は何度も聞こえた。
でも今は、リフレッシュする時だ。
これも作戦。
そう自分に言い聞かせ、ようやくミスト扇風機を後にした。
エイドを出ようとすると、あつしさんやあさいさんが声をかけてくれる。
「みつくーん」
そしてよりちゃんとあきちゃんを発見。
去年に引き続き今年も、この場所で応援してくれた。
毎年変わらず待っててくれる人がいる。
それだけで胸が熱くなる。
丹生川エイドは、本当に特別な場所だ。
みなさん、本当にありがとう。





しばらく進むと、飛騨高山ウルトラマラソンの分岐が見えてきた。
71kmは左。
100kmは右。
この場所へ来るたびに思う。
「左へ曲がりたい。」
でも100kmに挑む以上、進むのは右しかない。
その先には、この大会最大の難所。
千光寺の坂が待っている。
最初は走り出した。
でも数メートルで悟る。
「あ、これは無理だ。」
迷わず歩きに切り替えた。
周りを見渡す。
サブ10を狙っているであろうランナーばかり。
もし皆が走っていたら焦っていたと思う。
でも、ほとんどの人が歩いていた。
「そりゃ、そうだよな。」
少しだけ安心した。
歩くといっても、のんびりではない。
タイムを狙っている以上、止まるわけにはいかない。
早歩き。
パワーウォーク。
腰に手を当てたり、姿勢を変えたりしながら、少しでも前へ進む。
きつい。
きつい。
頭の中は、その言葉だけ。
まるで拷問。
いや、修行と言ったほうが近いかもしれない。
「こんな坂、コースに入れちゃいかんよ。」
思わず苦笑いしながら、ひたすら坂と向き合い続けた。




60km
5時間46分10秒。
サブ10までの貯金は14分。
少しずつ、貯金が削られていく。
体もあきらかに重くなっていた。
疲労なのか。
暑さの影響なのか。
それとも熱中症の始まりなのか。
原因はわからない。
ただ、頭が少しふわふわする感覚があった。
ここで弱気になれば、気持ちは一気に崩れてしまう。
「気のせいだ。」
「まだ大丈夫。」
自分に何度も言い聞かせる。
それでも、この時にはもう感じていた。
サブ10。
ギリギリの戦いになる。
そんな予感が、胸の中で大きくなり始めていた。

60km~80km

前方に、赤い建物が見えてきた。
千光寺の仁王門だ。
三味線の音色が聞こえてくる。
その音に迎えられながら、108段の石段へ足を踏み入れた。
不思議なことに、激坂よりも階段のほうが体は動く。
一段、また一段。
何度か手すりの力も借りながら、ゆっくりと登っていく。
そして、ようやく最後の一段へ。
「あーーーー、終わった。」
思わず息を吐いた。
エイドでは頭からたっぷりの水をかける。
火照った体を冷やしながら、乱れた心も整えていく。






千光寺の坂を上り切ると、今度は一気に下りが始まる。
ここからが勝負だった。
頭の中でイメージする。
最後までノンストップで下り切る。
その一点だけに集中した。
途中、二人のランナーと自然に並走しながら気持ちよく坂を下っていった。
やっぱり私は下りが好きなんだ。
脚が自然と前に出る。
走れる。
その感覚だけでさっきまで重かった体も、少しだけ軽くなった気がした。
70km
6時間46分47秒。
サブ10までの貯金は13分。
60km地点から貯金はほぼ減っていない。
これは大きい。
残り30km。
この13分をどう使うか。
すべてはここからだ。
「まだ大丈夫。」
自分に言い聞かせるが、現実は少しずつ厳しくなっていた。



坂を下り終えると平坦なロードが続く。
これが思っている以上につらい。
スピードが上がらない。
脚が前へ出ない。
、、、。
ハンガーノックなのか。
それとも暑さの影響なのか。
自分が今どんな状態なのかよくわからない。
ただ一つ言えるのは、ピンチだったということ。
余裕は、もうほとんどない。
「どうすればいいのか。」
走りながら、そのことばかり考えていた。
楽しくない。
つらい。
気持ち悪い。
こんな状態になるには、少し早すぎやしないか。
弱気な言葉ばかりが浮かんでくる。
そんな時、ふと仲間の顔が思い浮かんだ。
みんな、どうしているだろう。
苦しみながらも、前へ進んでいるのかな。
きっと、それぞれの戦いをしているはずだ。
そう思うと、ここで諦めるわけにはいかない。
ウルトラマラソンは、不思議な競技だ。
どれだけ苦しくても、何か一つのきっかけで突然体が動き出すことがある。
景色かもしれない。
応援の声かもしれない。
補給かもしれない。
理由はわからないが、その奇跡をこれまで何度も経験してきた。
だから今回も、その奇跡が起こるのを信じて走った。
73.8km
第4関門、国府B&G海洋センターに到着した。
エイドへ入ると、二人の姿が目に飛び込んできた。
んたろーさんとみほこさん。
「来てくれてたんだ。」
その姿を見た瞬間、胸が熱くなった。
ここまで、ずっと苦しさと戦ってきた。
だからこそ、待っててくれる人がいること、応援してくれる人がいること、その事実だけで涙が出そうになった。
頭からたっぷり水をかぶる。
そして、冷えた冷凍パインを口へ運ぶ。
甘さと冷たさが、火照った体にゆっくりと染み渡っていく。
深呼吸をする。
少しだけ気持ちが落ち着いた。
最後に三人でグータッチ。
「よし、行こう。」
そう思ってエイドを出ようとした、その時だった。
後ろから声が飛んできた。
「がんばれーー!」
仲間の声が、まっすぐ背中を押してくれる。
私は振り返り、大きな声で返した。
「がんばる!」
その一言には、自分自身を奮い立たせる意味も込められていた。
ここで流れを変えなければ、サブ10は届かない。
これが最後のチャンスだった。
頼む、復活してくれ。
心の中で願った。
ゴールまでは、あと26km。
「まだ26kmもある。」
「いや、もう26kmしかない。」
その時の感じ方で余裕度が分かるが、もう答えは出ていた。
「まだ26kmもある。」
それでも私は、ウルトラマラソンなら奇跡は起こると信じて、前へ進んだ。




80km
7時間57分37秒。
サブ10までの貯金は2分。
、、、。
貯金2分。
あれだけあった貯金がほぼなくなった。
諦めたくない。
まだやれる。
そう言い聞かせて脳をだましてきたけど、もう走り続けることができなくなっていた。
歩いては走っての繰り返し。
脚はまだ残っているのに、体に力が入らない。
頭がぼーっとする。
止まって呼吸を整えないと歩くことができない。
、、、。
DNFが頭をよぎった。
ここまでタイムを狙って全力だったから無理をしたのは当然あるが、その代償は大きかった。
残り20km。
全歩きでも完走するための時間は十分あるが、ここからゴールまで本当に歩けるだろうか?
一気に不安になった。
途中で倒れることも考えてしまった。
それだけは絶対にしてはいけない。
頭では分かっている。
でも冷静な判断ができなかったのはたしか。
ついさっきまでタイムを狙っていたのに、目標を見失い混乱していた。
やめるべきか?
続けるべきか?
しばらくの間、考えながら歩いていた。

80km~ゴール

サブ10までの貯金は、2分。
、、、。
その数字を見た瞬間、現実を悟った。
サブ10の夢は、ここで終わった。
悔しいが現実を受け止める。
走って歩いて、走って歩いて。
ひたすらその繰り返しだった。

85km
もう走ることができなかった。
だけど散歩くらいの速さなら歩ける。
「よし、ここからは高山を散歩しよう。」
そう決めた瞬間、心が楽になった。
横では、ランナーが軽快な足取りで駆け抜けていく。
その姿が、うらやましかった。
「なんで自分は歩いているのだろう。」
そんな思いが頭をよぎる。
でも、どうすることもできなかった。
追い抜いていくランナーが、次々と声をかけてくれる。
「頑張りましょう!」
そのたびに、
「ありがとうございます。」
そう返して、少しだけ走ってみる。
でも、数メートルで体の力が抜けてしまう。
「あぁ……。」
その場で立ち止まり、大きく息を整える。
本当に苦しかった。
「もう、やめたほうがいいのかな。」
立ち止まるたびに、その言葉が浮かんできた。
ゴールまでは、あとどのくらい歩くのだろう。
頭の中で計算しようとしても、うまく考えられない。
本当に完走できるのだろうか。
不安だけが、静かに全身を覆い尽くしていった。



88km
あれから、ずっと歩いている。
途中、何度リタイアを考えたことか。
高山最後の難所。
ラスボスともいえる坂を、一歩ずつ歩きながら思う。
「私は、どこへ向かっているんだろう。」
サブ10という目標は、もう手の届かないところへいってしまった。
気づけば、走る意味さえ見失っていた。
本来なら、この坂を上り切ってからのラスト10kmが勝負だった。
でも、現実は甘くなかった。
何が足りなかったのだろう。
歩いている時間が長いからこそ、考えなくてもいいことまで考えてしまう。
こんなに長い時間、歩き続けたのはおそらく初めてだ。
やめれば楽になれる。
それはわかっていた。
でも、制限時間はまだ十分ある。
だから自分から終わりにすることだけはしたくなかった。
「歩ければ、完走できる。」
その思いだけが、私を前へ進ませていた。
この時の戦いは、もうサブ10との戦いではない。
自分に負けないための戦いだった。


90km
9時間40分42秒。
この10kmにかかった時間は、1時間43分。
平均ペースは10分19秒。
もう、ペースもタイムもどうでもよかった。
残り10km。
体は、完全に限界だった。
少しでも気を抜けば、その場に倒れてしまう。
そんな感覚だった。
正直、ここまでだと思った。
これまで、たくさんの人が声をかけてくれた。
そのたびに「ありがとうございます」と返してきた。
でもこの頃は、その一言を口にするだけで精いっぱいだった。
声に力が入らない。
笑顔を返す余裕もない。
もう、話す力さえ残っていなかった。

91kmのエイドへたどり着く。
頭から水をかぶる。
「ハァーーーーー。」
気持ちよさではなく、ため息が漏れた。
本当なら、
「フゥーーー、気持ちいい。」
そう感じるはずだった。
でも違った。
ため息をついた瞬間、強い立ちくらみが襲ってきた。
両手を太ももにつき、倒れないよう必死に踏ん張る。
動けない。
ボランティアさんの声は聞こえる。
ランナーが通り過ぎる気配も感じる。
しかし、体は反応してくれなかった。
目も開けられない。
正直、怖かった。
、、、。
ゆっくりと目を開ける。
目の前にはパイプ椅子。
「とりあえず、座ろう。」
そう思い、力を振り絞って腰を下ろした。
完全に終わっていた。
まるでKO負けしたボクサーのように、体に力が入らない。
しばらく目を閉じたまま座っていると、ボランティアさんが優しく声をかけてくれた。
「大丈夫ですか?」
その声でゆっくり目を開ける。
大丈夫じゃない。
それは自分が一番わかっていた。
呼吸を整えながら、小さな声でお願いした。
「すみません……氷をいただけますか。」
しばらくすると氷を持ってきてくれた。
その氷を握りしめ、首、おでこ、腕、脚。
体の至るところを冷やしていく。
どこかが痛いわけではない。
ただ、頭がぼーっとして、体に力が入らないだけ。
今思えば、熱中症だったのだと思う。
「もう、やめよう。」
何度もそう思った。
でも、その一言が言えなかった。
「やめます。」
その言葉を口にしようとしても、どうしても出てこない。
代わりに口から出たのは、
「少し横になってもいいですか。」
という言葉だった。
本当は、やめるつもりだった。
それなのに、言えなかった。
やめられない。
そのことが、こんなにもつらくて怖いとは。
ここまで無理をして完走する必要があるのか。
今ならそう思える。
でも、あの時の私は、その判断ができなかった。
マットを敷いてもらい、横になる。
テントを見つめながら考える。
なぜ、ここまでして走ろうとしているのだろう。
自分でもわからなかった。
高山はもう完走している。
サブ10の挑戦も、終わっている。
それでも、諦めきれない。
私は昔から、諦めが悪いことを長所だと思ってきた。
でもこの場面では、その長所が自分を苦しめていた。
心の中で繰り返す。
「やめたほうがいい。」
「絶対にやめたほうがいい。」
自分を納得させるために、何度も何度も。
それでも決心はつかなかった。
どれくらい横になっていただろう。
15分だったのか。
20分だったのか。
時間の感覚は、もうなかった。
ゆっくりと目を開ける。
そしてゆっくり体を起こす。
少しだけ楽になった気もする。
でも、本当に回復したのかはわからない。
進むのか。
やめるのか。
答えを出せるのは、自分しかいない。
もし一人で参加していたら、おそらくここでリタイアを選んでいただろう。
でも今回は、飛騨狂走連合の仲間と一緒だった。
みんなと同じゴールへ帰りたい。
その思いだけが、もう一度私を立ち上がらせた。



エイドを出てからは、修行のような時間だった。
それでも、脚だけは止めなかった。
途中、一人のランナーと並んで歩くことになった。
初めて会う方だった。
これまで出場した大会のこと。
走ってきた思い出のこと。
たわいもない話をしながら歩いていると、気づけば次のエイドに到着していた。
あの時間がなければ、きっともっと苦しかったと思う。
ご縁に感謝。
出会いに感謝。
苦しい100kmだからこそ、人との何気ない出会いが心に残る。



93.3km
第5関門に到着した。
制限時間には、まだ余裕がある。
歩き続けることができれば完走はできる。
そう自分に言い聞かせながら、再び歩き始めた。
田んぼ道をゆっくり進む。
体は少しだけ楽になった気がする。
でも、走ることはできなかった。
この頃何を考えて歩いていたのか、あまり覚えていない。
頭の中はぼんやりしていたが、一つだけ覚えていることがある。
「まだ歩ける。」
その言葉だけを何度も繰り返しながら、一歩、また一歩と脚を運び続けた。

気付けばゴールまであと2km。
ちょうどその時だった。
前方に二人の姿が見えた。
つばさくんとみほこさんだ。
「えっ?」
思わず笑顔になる。
つばさくんは、すでにゴールを終え、着替えてから私を迎えに来てくれていた。
その手には、んたろーさんが作ってくれた応援うちわ。
ライブ会場でしか見たことがないような、あのうちわ。
「あれって、あんなに元気をもらえるものなんだ。」
本気でそう思った。
そこへ、かなさんも合流した。
かなさんも自己ベストを目指していたが、今回は思うような結果には届かなかった。
それでも、お互いここまで帰ってきた。
それだけで、十分だった。
その後、かなさんとみほこさんは先へ。
私の隣には、つばさくんがいてくれた。
ただ隣を歩いてくれる。
それだけで、こんなにも心強いんだ。
思い返せば、初めてサブ3を達成した日も、最後まで横にいてくれたのは、つばさくんだった。
まだ出会って、それほど長い時間が経ったわけではない。
それなのに、自分にとって大切な場面には、いつもつばさくんがいる。
ご縁って、本当に不思議だ。




坂を上っていくと、最後に必ず迎えてくれる看板がある。
「おかえり!」
「完走おめでとう!」
「感動をありがとう!」
その言葉が、一つひとつ胸に染みていく。
サブ10は叶わなかった。
何度やめようと思ったことか。
それでも私は、ここまで帰ってくることができた。
その事実だけで、胸がいっぱいになった。

目の前に広がるゴール会場を見つめながら、今ここに立っていることが、まだ信じられなかった。
今日はサブ10を目指してスタートした。
でも途中で走れなくなった。
歩くことさえ苦しくなった。
何度もリタイアが頭をよぎったが、それでもここまで帰ってきた。
人は追い詰められると、
必死に考える。
必死にもがく。
できることを探し続ける。
あの日の私は、ただそれを繰り返していた。
ゴールゲートが近づく。
名前を呼ばれた。
たくさんの拍手が聞こえる。
本当は最後くらい走ってゴールしたかった。
でも、ここまで歩いて帰ってきたんだから最後も自分らしく歩いてゴールしよう。
そう決めた。
「おかえりーー!」
あちこちから、その声が聞こえてくる。
フルマラソンでは、あまり聞くことのない言葉。
「おかえり。」
その一言で、苦しかった100kmがすべて報われた気がした。
ゴールのすぐそばには、先に完走したまみぃが待っていた。
「脚が動かん。」
そう伝えると、笑顔で返してくれた。
「頑張った、頑張った。」
その言葉に、ようやく力が抜けた。
仲間がいる。
待っててくれる人がいる。
それだけで、人はこんなにも救われるんだ。
こんなにボロボロになってゴールしたのは、初めてかもしれない。
でもこのゴールには、このゴールにしかない価値があった。
最後にゴールテープを高く掲げる。
サブ10の夢は叶わなかった。
それでも私は、胸を張って思う。
完走できて、本当によかった。
そして改めて気づいた。
ゴールとは、速く着くことだけじゃない。
どんな形でも、自分の足で帰ってくること。
それもまた、一つのゴールなんだと。
飛騨高山ウルトラマラソンは、今年もたくさんのことを教えてくれた。







今回ご一緒してくれた皆さま、楽しい時間をありがとうございました。



まとめ
飛騨高山ウルトラマラソンは、今年もたくさんのことを教えてくれた。
目標だったサブ10は叶わなかった。
50kmまでは計画通りだったが、80kmを過ぎて体は限界を迎え、91kmではリタイアを考えた。
それでも前へ進めたのは、自分一人の力ではない。
仲間の応援、そして最後まで諦めたくないという思いがあったから。
その一つひとつが、止まりそうになる私の背中を押してくれた。
挑戦は、思い描いた結果で終わるとは限らない。
それでも最後まで諦めず、自分の足でゴールまで帰ってきたことは、何ものにも代えがたい財産になった。
悔しさは残るが、それ以上に人の温かさに触れ、自分は一人では走っていないことを改めて実感できた100kmだった。
サブ10は、また来年の宿題。
だから私は、もう一度このスタートラインに立つ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
※2026年9月10日、追記。
今回サブ3達成までの12年間を振り返り、noteにまとめました。
18903文字。
普通に読んで約40分。
私が遠回りした分だけ、これからサブ3を目指す人に少しでも近道してほしい。
そんな思いで書きました。
34歳から走り始めて、46歳でサブ3。
12年間の経験を、ここに残したので読んでもらえたら嬉しいです。

おまけ
まみぃ、入賞おめでとう。
なおさん、初100km完走おめでとう。
んたろーさん、応援隊長ありがとう。

【飛騨狂走連合】で過ごした時間は最高に楽しかったです。
みんなありがとう。








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