みなさんこんにちは。
ラン歴12年のみつ @hiroki.mitsunaga(3:09:28)が2025/4/20に開催されたチャレンジ富士五湖ウルトラマラソンに参加してきました。
サブ3とは別の夢、100kmでサブ10。
去年は飛騨高山ウルトラマラソンでサブ10に一度挑戦してみたけど40kmで撃沈でした。
あれから10か月。
その間フルマラソンを6本走り、練習もしっかり積んできたので可能性はゼロではないはず。
キツイ挑戦なので出来れば一回で達成したい。
そんな思いを持ちながら勝負してきました。
レース内容をすぐに読みたい方は
「8.スタート」からご覧ください。
長文になりますが最後までお付き合いいただけたらうれしいです。
【富士五湖ウルトラマラソン】レース動画(Instagramリール)
この記事を執筆している筆者の簡単なプロフィールになります。
現在の目標はマラソンサブ3。
アシックス大好きランナーでもあります。
- 34歳(はじめは10km走れない状態)からランニングを始め現在46歳
- 初フルマラソン5:35:29(2015) 名古屋アドベンチャーマラソン
- フルマラソン3:09:28(2025) 京都マラソン
- ハーフマラソン1:27:20(2024)東京レガシ―ハーフマラソン
- 10km39:27(2023) 刈谷市かきつばたマラソン
- 100kmトレイルランニング完走24:05:29(2024)志賀高原100
- 100kmウルトラマラソン完走11:41:38(2024)飛騨高山
- 118kmウルトラマラソン完走14:32:45(2023)チャレンジ富士五湖
- 100マイルトレイルランニング完走44:15:44(2024) Mt.FUJI100


結果

チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン100kmの結果になります。
記録:10:24:26(ネット)
100kmサブ10を目指してガチで走ってきました。
50kmまでは少しずつ貯金を増やす展開で予定通りの走りができた。
ただ50km以降は貯金を切り崩す流れに。
80km地点での貯金はわずか2分。
富士五湖ウルトラのラストは激坂が待っているのでここでサブ10の夢は途切れた。
でも、ベストは尽くした。
ごまかしなし、悔いなし。
終わってみれば、苦しさすらも良き思い出。
(と、自分に言い聞かせている)
サブ10の夢は叶わなかった。
けど、「ちゃんと走りきった」という納得感が残っている。
だから、いい。……いや、よくはないけど、悪くもない。
そういう微妙な感情。
正直なところ、また挑戦したいかと聞かれれば「ウルトラはゆっくりエイドを楽しみながら走りたい」という気持ちだがまた来年、なにかしてると思う。
いや、絶対なにかしてる。
そういうやつなんです、自分は、笑。
完走した時のペース表
こちらは10kmごとのラップタイムになります。
富士五湖ウルトラ100kmは前半より後半の方がコースがきつめになっています。

こちらは1kmごとのラップタイムになります。
※合計距離が103kmになっているのはお許しください(時計の性能上、距離が多めに出る傾向あり)







サブ10できる目安基準

私が思う富士五湖ウルトラでサブ10できる目安基準はこんな感じになります。
(当本人はサブ10できていませんが、、、)
- マラソン3時間~3時間10分
- 長い距離を走り続ける力がある
- 一定ペースを刻み続けることができる
- 忍耐強い
- ウルトラの練習を何回か積んできている(50km以上)
ちなみに私の実力はこちらになります。
- マラソン 3:09:28 (京都マラソン)
- ハーフマラソン 1:27:20(東京レガシ―ハーフマラソン)
- 富士五湖ウルトラマラソン118km完走 14:32:45
- 飛騨高山ウルトラマラソン100km 11:41:38
- Mt.FUJI 100完走 44:15:44(トレラン100マイル)
今回真剣にサブ10を目指して挑戦しましたが夢叶わずでした。
一般的にマラソンサブ3の人はウルトラでサブ10できると言われています。
マラソンとウルトラは別競技だと私は思いますがやはりマラソンサブ3はひとつの目安になると思う。
あとは天候(暑さ、寒さ、風、晴れ、くもり、雨)も大きく関係してきます。
今回走った2025年はくもりで気温も涼しくベストコンディションだったけど達成できず残念でした。
富士五湖ウルトラ、サブ10するための攻略法

富士五湖ウルトラでサブ10するための攻略法はこちらになります。
対象はサブ10できるかできないかギリギリラインの方です。
※ちなみに私はサブ10できていませんが感じたことを書きました。
■富士五湖100kmの特徴
- 累積標高は約850〜1000m(大きな峠はないが、細かいアップダウンが多い)
- 路面はほぼ舗装路で林道や砂利道はごく一部。
- 気温はスタート時は8℃前後、日中は20℃前後まで上がる
■ サブ10のための5大戦略
① ペース戦略:前半で多少の貯金、後半で粘る
- 設定ペースはキロ5:35~5:40
- 前半50kmを4時間45分以内で通過するのが理想。
- ウルトラでは後半にペースが落ちるのが前提なので、前半から「楽に速く」走って少しだけ貯金を作る。
- ただし、突っ込みすぎて脚を使い切るのは禁物。
② 補給戦略:胃を守りつつ計画的に摂取
- 40〜50分ごとにジェル or 固形(おにぎり、羊羹)+水分を摂る。
- エイドでは梅干し・スープ・バナナ・味噌汁などを活用(塩分・温かさがカギ)。
- エイドは最低限のフード、水分補給(長居する時間はありません)
- 後半(70km以降)ではカフェイン入りジェルやコーラで気持ちを立て直す。
③ 装備戦略:重すぎず、必要十分に
- ライト(スタート時だけ必要)、使わない選択もありですが怪我には注意。
- ウエストポーチ or ベスト(ジェル・塩タブ・予備補給)
- 時計(ラップ管理用)
- アームカバー or ウィンドシェル(気温変化対策)
- 予備ソックス or ワセリン(靴擦れ・マメ対策)
④メンタル戦略:目標を細かく刻む
- 「10kmごと」「エイドごと」に小目標を設定
- キツくなったら「フォームを整える」「人と喋る」「ありがとうを言う」など気持ちをそらす
- 「歩かず刻む」ことが最大の精神的アドバンテージ
- 62km、75kmのスライド区間、ここの上りは想像以上にきついです。サブ10するんだと気持ちを強く持つ
- 96km ~98kmの激坂は超キツイですがここは気合いで乗り越える(キロ8分台になる)
⑤ トレーニング戦略:マラソン力+ウルトラ耐久の両立
・サブ10狙いの目安基礎力
- フルマラソン:3時間10分切りが理想
- 週間走行距離:60〜100km
- 登り耐性:峠走(20〜30km)を月1〜2回
- ロング走:40〜50km走を本番2ヶ月前までに2〜3回
・補足:走り込みの代替として
- ロングトレイルレース出場
- LSD+坂ダッシュの日を設ける
- 30km走+ビルドアップ走のセット練
サブ10するにはいろいろな作戦があると思いますが一番大事なのは設定ペース。
キロ5:35~5:40ペース。
やはりここが目安になると思います。
前半飛ばして貯金を作る作戦もありますがほどほどの貯金で大丈夫です。
過度な貯金は作らないほうがいいと思います。
サブ10。
なかなか厳しい挑戦ではありますがいつか絶対に達成したいです。
難易度

富士五湖ウルトラマラソン100kmの難易度を私が今まで参加した大会と比較してみました。
年により気候条件が違うのはお許しください。
※あくまで私個人の感想になります。
(1が優しい、12が厳しい)
大会名 | 難易度 | 特徴 |
Mt.FUJI 100 100マイル | 12 | 累積標高7039m |
志賀高原100 100km | 10 | ゲレンデ・制限時間26時間 |
奥信濃100 100km | 9 | 制限時間が21時間 |
ONTAKE100 | 8 | 7月なので暑い |
野辺山ウルトラマラソン100km | 8 | 超激坂と日中の暑さ |
富士五湖ウルトラマラソン118km | 7 | 基本平坦で走りやすい |
飛騨高山ウルトラマラソン100km | 6 | 坂が多くて暑い |
丹後ウルトラマラソン100km | 6 | とにかく暑すぎる |
富士五湖ウルトラマラソン100km | 5 | 基本平坦で走りやすい |
OSJ新城トレイル32km | 4 | アップダウンが厳しい |
富士五湖ウルトラは野辺山、飛騨高山、丹後の中では一番完走しやすい大会だと思います。
開催時期は4月で涼しく、激坂は最後にありますがわりかしフラットで走りやすい。
100kmは走る時間が長くなるので気候条件がとても影響してきます。
ちなみに丹後は9月開催なので暑すぎる。
野辺山は5月開催だけど馬越峠の坂が超エグイです。
飛騨高山は6月開催、涼しくなればいいですが暑くなると後半がきついです。
ウルトラ100kmを完走できるとトレランのロングレースにも挑戦したくなってくるかも⁈
今の課題をクリアするとさらに上の挑戦がしたくなるみたいです。

前日移動

7:30
自宅を出発。
窓から見える景色は少しずつ確実に「日常」から「旅」へと変わっていく。
10:00
静岡SAでちょっと休憩。
すると「静岡おでん」の文字と目が合ってしまった。
厳密に言えば「お店のなかで一番光って見えた」というだけのことなのだが、あれは確かに私を呼んでいた。
店に入るとだし巻き卵と黒はんぺんが、出汁の海から顔をのぞかせ「こっちへおいでよ」と言っている気がした。
完全に思い込みである。
でも、旅先での思い込みほど人を幸せにするものはない。
12:00
道の駅すばしりで足湯に浸かる。
さほど広くはないけれど湯気がもわんと立ちのぼる足湯に靴下を脱いで足を入れた。
その瞬間ため息と一緒に「いま、旅してるなぁ…」という実感がこぼれた。
日常ではなかなか味わえないこの“境界をまたいだ感覚”は、ほんの数分でも大きな意味を持つ。
肩に力を入れず、ただ湯にゆだねるだけでいいという時間。
癒しという名の泉だった。
リフレッシュした後は山中湖を少し散策。
湖面に浮かぶ小さな波と白鳥の船。
旅って、いいなと思う。
理由なんていらない。
そこに景色があって、自分がいて、そしてちょっと美味しいものがあればもうそれだけで充分なのだ。




13:00
お昼ごはん(古志路)
テーブルにずらりと並んだのは、我らがイツメン――レースのたびに顔を合わせる仲間たちだ。
気を遣わず、無理に盛り上げなくても、場がちゃんと温まるのがすごいところ。
メニューは迷うことなく「ビーフシチュー」。
コトコト煮込まれたやわらかビーフと、深いコクのソースをいただく。
一口食べると、目を閉じたくなる旨さ。
レース前というのに「赤ワインが欲しい」という禁断のささやきが脳裏をよぎる。
それほどまでに、このビーフシチューは罪深かった。
テーブルを囲んでの会話は、当然のようにウルトラ話。
「ジェルは何本使う?」「ラストの激坂は地獄だったよね」「今回こそはリベンジだ」
誰かが話し始めれば誰かが「わかる〜」と即座に拾い、また誰かが笑いながら補足する。
こういう時間は、情報交換というより「気持ちのチューニング」だ。
みんなそれぞれに不安や緊張を抱えている。
でもそれを言葉にして、笑って、また食べて、肩の力を抜いていく。
腹も満たされ心もほどよくあったまったところで、そろそろ会場へ向かう時間だ。
15:40
ゼッケンなどはもう郵送されているので行かなくてもいいのだが、スタート会場の富士北麓公園へ。
気持ちいいくらいの晴れ。
そして、目の前には――富士山どーん。
そうとしか言いようのない存在感で、そこにあった。
どこから見ても絶対に逃げようのない堂々たるその姿は、いつ見ても胸を打つ。
「ようこそ」と言っているのか、「覚悟はいいか」と睨んでいるのかわからない。
でもどちらにしても、私たちはここに来たのだ。
走りに来たのだ。
いよいよ明日、長い長い一日の幕が上がる――。





16:30
登り坂ホテルにチェックイン。
ロビーで手続きを済ませて、部屋の鍵を受け取る。
ドアを開けるとまず視界に飛び込んできたのは、窓いっぱいに広がる――富士山。
完全にナイスビュー。
しかも、ただの「見える」ではない。
正面、ド真ん中。
「この部屋、当たりだな……」と小さくつぶやきつつ、カーテンを開け放ちカメラで何枚か撮る。
が、写真ではなかなか伝わらない。
この雄大さ、そして“これから始まるなにか”の気配。
それはもう、自分の目で見るしかない。
明日の流れを確認しゼッケンを出して、シューズを用意して、ジェルを並べて……とやっているうちに、なんだかんだで時間は過ぎていく。
準備というのは、ある種の“心の儀式”だ。
終われば、ほっとひと息。
ベッドに横になるとまぶたの裏に、またさっきの富士山が浮かんだ。



今回用意した補給食はこちら。
全て使い切りました。


17:30
夕食は、以前なおさんに教えてもらったほうとうの名店「小作」へ。
店内に一歩足を踏み入れると、「絶対にうまい」が約束されているような店の雰囲気だった。
席に案内されると、横には見覚えのある顔が。
「たくやくん!?」「みきさんも!?」
一瞬、脳が状況を把握しきれなかったが、確かにそこにはラン友のふたりがいた。
旅先での偶然の再会は、なぜあんなにも嬉しいのだろう。
そのままご一緒させてもらい自然と会話が始まった。
明日のレースの話やこれまでの経験談などを語り合う。
ひとりで食べるごはんよりも、断然美味しく心強かった。
「ご一緒できて良かったです」と言いながら、本当にそう思った。
胃も心も、じんわりとあたたまる夕食だった。
そういう時間が、走る前の“エネルギー”になる。
20:00
就寝。
寝れないのは分かっていたが目を閉じた。



当日の朝

1:45
起床。
ウルトラマラソンの夜は毎回決まって眠れない。
携帯のアラームが鳴るよりも先に目が覚める。
ちゃんと寝たのかな?
布団の中で目を閉じて「眠ってるふり」をしていただけのような気もする。
2:10
朝ごはんを食べる。
いつものおにぎり3つとお味噌汁。
ニーダッシュ、ファイテンパワーテープ、日焼け止めを塗ってスタンバイ完了。
※ウルトラでは欠かせない私の3大神アイテム。



2:45
支度を整え、ホテルのエレベーターに乗り込む。
車に乗り込み、目指すは富士急ハイランドの駐車場――コニファーフォレスト。
ナビによれば、たった10分の距離だが。
案の定、道は少し渋滞していた。
前方のブレーキランプがぽつぽつと赤く灯って、まるで「覚悟できてるか?」と問いかけてくるようだった。
3:10
駐車場に到着。
車を降りて歩いているとちょっとしたサプライズが待っていた。
昨日ほうとうを一緒に食べたたくやくんとみきさんが、ふいに目の前に現れたのだ。
「えー!また会えたね!」
「ほんとに!」
こういう時って驚きと嬉しさとが混ざり合い、声がワントーン高くなる。
それにしても不思議なもので、会えるときは会えるのだ。
これが縁ってやつなのか、ウルトラマラソンの魔法なのか。
3:15
私たちはバスに乗り込んだ。
まだ眠気の残る顔。
みんな、これから始まる長い一日のことを心のどこかで思い描いているのだろう。
バスが満員になると、運転手さんがアクセルを踏んだ。





3:25
スタート会場――富士北麓公園に到着。
バスを降りると、ひんやりとした空気が肌にまとわりついた。
荷物を預け終えると120kmの部に出るけんさん、てるっちさんの応援へ向かった。
スタート前のあの独特な空気――緊張と高揚が渦巻いている中で、ふたりの姿を見つけたときは思わず手を振った。
「がんばってー!」
「いってらっしゃーい!」
誰かを応援することは、同時に自分の心を鼓舞する行為でもある。
大丈夫、ふたりならやれる。
そう思いながら、背中を目で追い続けた。
走り去っていくランナーの列は、まるで夜の中に吸い込まれていく流星群のようだった。
2人を見送ると次は100kmの部に出る田中くんと写真を一枚。
この日一番の小道具、おそろいの「ナイスラーーーン手拭い」を手にすると気持ちがグッと高まった。







スタートまで、あと1分。
周囲はざわざわとした緊張と静寂が入り混じっていて、誰もが静かに自分の内側と対話している。
「お互いサブ10して乾杯しよう」
田中くんに声をかけた。
言葉に出すと、それは小さな魔法になる。
目標が、単なる願いごとから現実に向かうための誓いに変わる。
ペットボトルも缶ビールも手にしていないけれど、心の中ではすでにグラスがカチンと音を立てていた。
あと30秒。
シューズの紐をもう一度確認しながら、深く、息を吸い込む。
冷たい空気が肺に入って、胸の奥がすうっと澄んでいく。
あと10秒。
いくつもの願いが、ここにいるすべてのランナーの胸でそれぞれの形をして脈打っている。
そして。
号砲――「始まり」を告げる音が鳴った。
走り出す足。
動き出す時計。
私たちは、未来の乾杯に向かって走り始めた。

スタート~20km

4:30
まだ夜の名残を引きずる空気の中、富士五湖ウルトラマラソン100kmの部がスタートした。
飛騨高山ウルトラから10か月ぶりのウルトラマラソン。
正直なところ最近はフルマラソンのことばかり考えていた。
速さ、記録、ペース。
そんな数字に囚われる日々だったがウルトラに変わったことで肩の力が少し抜けていた。
スタートラインの横ではみゃこさんとハイタッチ。
手のひら同士がぶつかる、あの軽い衝撃。
なんでもない一瞬なのに、胸の奥に火が灯る。

よし、行こう。
目標は「サブ10」
100kmを10時間未満で完走すること。
それはサブ3とはまた違う、もうひとつの夢だった。
気候もコースも狙いやすいと言われるこの富士五湖でガチの挑戦が始まった。
今回の作戦はシンプル↓
・キロ5:40ペースの力で走る(上りは少し遅くなるし下りは少し速くなる)
・50kmまではとにかくリラックスして
・70kmを過ぎたら、そこからが本当の勝負
サブ10経験者、半陸連のせんさんからアドバイスをいただきペースは5:40に決めた。
※もしアドバイスを聞いていなかったら5:00~5:15くらいで突っ込んで撃沈していたと思う。
今はただ、5:40、そのリズムを信じて走る。
まず最初に目指すのは、山中湖。


5:00
うっすらと夜が明けてきた。
曇り予報なんて嘘みたいに富士山はそこにあった。
静かに、だけど圧倒的な存在感で。
そのことだけで胸がいっぱいになる。
5km
赤信号に捕まった。
「マジか」
そんな気持ちを押し殺して呼吸を整える。
無駄な焦りはきっと後半に響くから。
こういう時は割り切って一度冷静になる。
タイムを気にしていないならそんなに関係ないが今回はサブ10を目指していたのでできることなら止まりたくない。
直線であれば前方に見える信号の色を見てペースを上げたり落としたりして調整した。
信号が青に変わるとランナー達が一斉に走り出す。
歩道を走るから転ばないように、肩をぶつけないように譲り合いながら進んだ。
左手に、桜。
花びらだけが淡く光っている。
あー、きれいだな。
まだ薄暗かったので余計に輝いて見えた。



10km
5:27(スタートから57分)
飛ばし過ぎず、遅すぎず。
完璧だったのでニヤリと笑った。
前方に山中湖が見えてきた。
また赤信号。
焦らない、焦らない。
手前から歩きに変える。
後ろから次々とランナーが追いついてきて小さな群れになる。
みんなそれぞれの夢を背負って走っているんだろう。
信号が青に変わると一瞬でバラバラに散り始める。
大丈夫、自分のペースでいい。



スーーーーハーーーー。
山中湖を眺めながら深呼吸。
体中に透明な朝がしみ込んでくる。
ウッドデッキを走るのでとにかく気持ちいい。
下が濡れていると滑りそうだが今回はそんな心配はいらなかった。
11km
ん?
あの後ろ姿。
すぐに分かった。
ふくらはぎが見事に発達した、なおとさん!
ウラヤマトレイルで一緒に裏山を走ったお方。
しばらく言葉を交わしながら並走する。
知った顔に出会えると不思議な力が湧くのです。



17.5km
6:10
第1関門 山中湖交流プラザきららに到着。
関門時間は7:25なので1時間15分の貯金になる。
でも今日はただ関門をクリアすることが目的じゃない。
あくまでも、目指すはサブ10。
ペースをしっかり刻んでいくだけ。





20km
6:24 (スタートから1時間54分)
サブ10だと6分の貯金。
胸の奥で小さな達成感が生まれる。
だけどすぐに打ち消す。
これはまだプロローグにすぎないから。
【ラップタイム】
10km 57:17
20km 55:49
心も、身体も、まだ元気。
本当の旅はこれから始まる。

20km~50km

20km
ここから35kmまでは若干下り基調なので走りやすいコースになっている。
走りやすい、実に走りやすい。
上り坂が人の心を削るなら、下り坂はそれをなだめる薬草だ。
「力を使うな、今はまだ温存だ」と、脳がつぶやく。
楽に、楽に。
何なら半笑いでもいいくらいのリラックスモードで脚を運んでいく。
今日の私は、まだ“マジの私”じゃない。
23.8km
エイドではパン、ドーナツ、梅干し、バナナというラインナップ、よく見る光景だ。
ドーナツをひとつ食べ、それとは別にジェルを補給。





天気は曇り、風はなし。
気温もちょうどいい。
つまり「言い訳が一切できない、ガチのやつ」である。
先月走ったとくしまマラソンでは、暑さと向かい風にやられて「これありえんじゃん」とか内心ブツブツ言ってたけれど、今日に関してはどの条件も完璧。
逃げられない。
だからこそ、チャンスでもある。
「これは決めにいく日だ」と、静かに気合を入れる。



25km
6:53
信号待ちで何度か足が止まったけれど、そのあいだはストレッチして気分転換。
焦りは禁物。
ウルトラは長い長い旅だ。
せかしてくるのは自分の心だけだ。
30km
7:21 (スタートから2時間51分)
順調。
いや、むしろちょっとできすぎなくらい。
でも油断は禁物。




33kmあたりからいよいよコースが牙をむいてくる。
37kmまで、じわじわとした上りが続く。
スピードは出せない。
でもリズムは崩さない。
頭の中でメトロノームの音を思い浮かべながら、「たん、たん、たん」と無心で上る。






38.3km
8:09
第2関門 富士北麓公園上を通過。
関門時間は10:15なので2時間6分の貯金だった。
自分の周りを走っているランナーを見て「あ、この人たち、絶対サブ10狙い組だ」と直感で分かる。
力の配分が、呼吸が、視線が。
でも、不思議と競争心よりも仲間意識が勝る。
知らないはずの彼らと、どこかで手をつないでいるような感覚になった。





45km
信号待ちで足を止める。
ん?
どこかで見たような、、、。
記憶の奥を掘り返すと、ふっと浮かび上がる名前――ムネムネさん。
以前富士山を一緒に登った人だ。
お互い汗だくで登頂したあの日が蘇る。
奇跡か、運命か、それともただの偶然か。
少しのあいだ並走しひと言ふた言、会話した。
言葉を交わすだけで、身体の重さが軽くなる。
不思議だなあ、やっぱり人って。


47km
8:55
河口湖大橋が目の前に姿を現す。
その壮大さに、しばし見とれてしまう。
右にも左にも視界が抜けて、橋の上からの眺めは最高!
これは……もはやご褒美では?
2年前のこの場所で、ひまわり姿の“はぎちゃん”が応援してくれたことを思い出す。
あの姿は今も心のスクリーンに焼き付いている。
人って、自分が頑張ってたときよりも、応援された瞬間の方をよく覚えているのかもしれない。





その先には桜並木が続いていた。
なんという演出。
ピンクが風に揺れて、曇り空を背景にふわっと浮かぶように咲いている。
満開に近い。
まるで「よく来たね」と迎えられているような錯覚すら覚える。
50km
9:17 (スタートから4時間47分)
サブ10までの貯金は13分。
ここまでのペースは、計画通り。
無理もしていない。かといってサボってもいない。
「この流れが、一番サブ10の確率高いんだよな」と、自分で自分にうなずく。
でも、ここでひとつ問題がある。
この距離を、もう一回やらなきゃいけないのだ。
疲労が忍び寄ってくる。
元気な状態で走ってこの貯金。
じゃあ、この先、脚が言うことを聞かなくなったとき――果たしてこの13分が味方になってくれるのか?
富士五湖ウルトラの本当の勝負は、ここからだ。
だったら、もう覚悟を決めるしかない。
これはもう、“後半戦”じゃない。
第二章だ。
物語はここからが本番、そんな気持ちだった。






50km~60km

50km
富士山がそこにいた。
曇り空の下、浮かび上がるように、静かに、堂々と。
青空のもとで見るよりも、こういう日の富士山はなんだか人間くさくてよい。
何かを語るでもなく、ただそこにいて、見ている。
私たちが、よちよち走っているのを。


52km
遠くに巨大なウサギを見つけてぎょっとする。
が、近づけば知っている顔がそこにあった。
じゅんさんとえっちゃんが応援してくれている。
なんてありがたいことだろう。
この大会は沿道の応援が多いわけでもないし、知っている人にはまず会わない。
だからこそ、知っている誰かが笑顔で立っているのを見つけると、胸の奥がほかほかする。
しかもお土産までいただいた。
ありがとう、なんだこの幸福感。
心が幸せで満たされた。


再び走り始め、トンネルを抜けた先には桜街道が待っていた。
季節を逆走しているような感覚。
咲き誇る花が、まるで「ようこそ」とでも言っているかのようだった。




55km
9:46
ここから2km、じわじわと心を折ってくる坂が現れる。
ウルトラあるある。
「ここで脚を潰すな」と、脳がささやく。
歩幅を小さく、腕を振る。
脚だけでなく、言葉でも自分を引っ張る。



56km
9:52
第3関門 足和田出張所に到着。
関門時間は12:40なので2時間48分の貯金になる。
まだまだ余裕の通過だが、私の頭の中は関門のことなど微塵も考えていなかった。
唯一考えていたのは、「サブ10を取れるかどうか」それだけだ。
エイドにて、梅干し・ドライフルーツ・レモンを補給。
このレモンが、異様にうまい。
酸っぱくて、キューンときて、でもなんだか元気になる。
ウルトラの途中で食べるレモンは、心のエナジードリンクだと思う。
しっかり3ついただいた。
エイドを出発しようとしたら大会ではものすごい確率でお会いできるあつしさんを発見。
あつしさんとはなぜか、どの大会でもすれ違う。
運命なのだろうか。
あつしさんは120km、自分は100km。
距離は違うけどお互い頑張りましょうとエールを交わした。




フルマラソンなら、他人としゃべる余裕などない。
でもウルトラは違う。
誰かとしゃべることで、命を繋げるのだ。
実際、喋るだけで回復することがある。
これはもう、何かの魔法である。
いや、科学かもしれない。
脳内でエンドルフィンがどうにかなっているのかもしれない。
でもそんな理屈はどうでもいい。
ただ、喋る。
それだけで、「もうちょっといけるかも」と思えるのだから不思議だ。
58km
10:16
激坂を上り終えトンネルを抜けると西湖が現れた。
何、この景色。
看板の上には満開の桜が。
絶景すぎて足を止めた。
、、、。
最高でしょ。
自分の中ではもう桜の季節は終わっていたので再び満開の桜を楽しめるなんて思ってもみなかった。




給水所まで500mの看板。
私はこの看板を見ると頑張るスイッチが入る。
500m。
トラックだと1周ちょい。
疲れていてもこの区間だけは走り切ろうと思うのだ。
ウルトラとは、小さなゴールの積み重ね。
たとえばこの500mを歩かずに走れたら、それだけで今日はもう勝ちなのだ。
ゴールが遠いからこそ、たくさんの「小さな達成感」を拾い集めていく。
「坂を上りきった、えらい」「笑顔で通過した、えらい」「止まらなかった、えらい」
もう、全肯定でいこう。
でなきゃやってられない。


60km
10:18 (スタートから5時間48分)
サブ10までの貯金は12分。
50kmから貯金を1分切り崩した。
冷静に考えたら、余裕などない。
でも「いけるかもしれない」と思わせてくれるのは、天候と、これまでの自分だ。
まだワンチャンいけるかもしれない。
ただ、明らかに身体が重くなっていた。
脚が出ない。
気持ちもフワフワしてくる。
あと40km……?
ここからフルマラソンを走るの?
普通に考えて、無理じゃね?という思いが脳内をぐるぐる回る。
でも今日がチャンスなのだ。
曇り空、風なし。
絶好の条件。
「これでダメだったら、もう一回やるの?」そう思ったら、何としても今日で決めたいと心が叫んだ。
苦しい挑戦は、一回でいい。

60km~80km

60km
西湖エリアを走って行く。
63km、72kmにはまぁまぁの上り坂が2回スタンバっている。
いいの、いいの、想定内。
行けるとこまでは頑張りたい。
上り坂その1。
気持ちはまだ戦闘モード。
前からすれ違うランナーの顔を見ると、ああ、みんな苦しいんだな、と安心する。
自分だけじゃないと思うと、何かが満ちてくる。
ひとりじゃない、それって本当に強い。

68.2km
見えてきた、精進湖畔駐車場のエイド。
目の前には満開の桜、そして──エクレア!
いや、まだ確定じゃない。
2年前、このエイドで私は心をへし折られている。
あのとき、ずっと楽しみにしていたエクレアが、売り切れていたのだ。
「うそでしょっ!」
心の中で叫んだあの日。
あれは忘れない。
忘れてなるものか。
だが今年は違う。
いいペースでここまで来た。
今なら、あるはず──!
紙袋が配られているのを見て、私は確信した。
あれだ。
絶対、あれ。
渡された袋には「中華まん」っぽいイラストがあって、若干の不安がよぎったが、開けてみれば、、、。
エ・ク・レ・ア!!
エクレアは、ちゃんと私を待っていてくれたのだ。
68.2km、6時間40分走ってきた私への最高のご褒美だった。
かぶりついた瞬間、甘さが染み渡る。
生きてる……と、感じた。
だけど時間は止まってくれない。
サブ10を狙うなら、ここでのんびりするわけにはいかないのだ。
桜の下、まだ口の中にエクレアの余韻を残したまま、私は走り出した。




70km
11:22(スタートから6時間52分)
サブ10までの貯金は8分。
じわじわと減ってきた。
でも、焦らない。
残り30km、まだ戦える。
ピンクの髪の毛が視界の端に見えた。
ゆうさんだった。
「頑張りましょうー」
この一言が、どれだけのパワーになるか。
心も体も軽くなった。






分岐の看板が見えてきた。
「100km・62kmは左」「120km・80kmは直進」
ここ、地味にミスりがち。
疲れてると、人について行きたくなる。
だけど、自分の道は自分で決めるしかないのだ。
過去のトレラン経験がそう教えてくれた。
迷った末の登り返しって、マジで心折れるから。

73km
再びスライド区間。
前から来るランナーと次々に「ファイトー!」「ナイスラン!」と声を掛け合う。
このキャッチボールが、ほんとうに元気をもらえる。
ひとりじゃないって、また思う。
何度思っても、やっぱりうれしい。
そして、エイドに到着。
ついに来た、吉田うどんチャンス第2ラウンド。
往路では人が多すぎてスルーしたが、今回はいける。
よし、食べよう、地元名物!
が。
硬い。硬すぎる。
何これ、というレベルで歯ごたえがある。
何度も噛んでいるのに、全然喉を通ってくれない。
うどんって「つるっ」といくものじゃなかったのか?
つるつるって胃に落ちない。
しかも時間ない。
詰め込んだ瞬間、胃が「無理」って叫んだ。
結論:吉田うどん、やっぱり手強かった。







80km~90km

80km
12:28(スタートから7時間58分)
サブ10までの貯金は2分。
私の中の何かがポキリと音を立てて折れた。
「……ここまでかー」
思わず口をついて出た独り言に、声というよりは溜息のようなものが混じっていた。
誰かに聞かれるつもりはなかったけれど、そこにはちゃんと“聴いてくれる人”がいた。
目の前に現れたのは、若さん。
サブ10を目指して走っていることは知っていて、途中自転車で応援してくれたのだ。
今の私を見て、すべてを察したように笑ってくれる。
そのやさしさが、なんというか、胸の奥をくすぐるようで泣きそうになる。
「やっぱりサブ10はキツイよ。もう脚が残ってない」
言葉にすることで、自分の弱さを認めることができた。
そんな告白のようなぼやきに、若さんは何も言わずにエアーサロンパスを取り出して私のふくらはぎにシューーーッと吹きかけてくれる。
「これ、効くから」
そう言いながら、入念に、優しく、けれど惜しみなくスプレーをかけてくれる。
そのぬくもりが、再び“もうちょっと行けるかもしれない”という気持ちを、私の背中に注いでくれた。


ただ、私は知っていた。
この先にあるのは、容赦ない坂道。
ここからもう一度ペースを上げてサブ10を狙うには、あまりに残された時間も脚力も少なすぎた。
……終わったな。
夢だったサブ10。
その夢に、最後の最後までしがみついていた自分がいた。
それだけでも、今回は十分だったんじゃないかと思えた。
もちろん、完全にあきらめたわけじゃない。
走りながら「もしかしたら」の希望を手放したくない気持ちはあった。
けれど、それと同じくらい「この先は気持ちで走らなきゃダメだ」という現実も分かっていた。
じゃあ、これからの20kmを、どう走る?
ファンラン?
いや、それは違う。
記録を狙ってきた自分に、それは似合わない。
時計を見れば、自己ベストの可能性はまだ残されている。
だったら、目標を変えよう。
“サブ10”ではなく、“今できる最高の走りを、ここから描こう。
そして自分のために今できることを、ただ黙々と積み重ねていく時間にしよう。
そう思った。



湖畔沿いを進みながら、足の指先にチクチクとした痛みが走る。
右足の親指と人差し指のあたりが、どうにもおかしい。
マメか、爪か、どちらにしても確認すれば気持ちが切れてしまいそうだった。
だから、見なかった。
知らなければ、走れる。
そう、残り10kmだ。
脚は重く歩幅も小さくなっていたけれど、まだ“動いている”という事実が、私を少しだけ誇らしい気持ちにさせた。
もしかするとこの10kmは、今日一日でいちばん「自分」と向き合う時間になるのかもしれない。
走る理由が変わっても、私の走りは私のままだ。
脚が止まらない限り、それだけでいい。
もう少し、この物語を走ってみよう。








90km~ゴール

90km
13:34(スタートから9時間4分)
時計を見る。
サブ10の貯金は、ついに底をついた。
いや、正確にはマイナス4分。
通帳の残高が「¥-4」と表示されたような気分である。
だが、驚くほど冷静だった。
「まだ、4分か」
思っていたより悪くない。
脚はかなりのへたりっぷりだが、上半身はまだ元気だ。
背筋を伸ばし、腕を強めに振る。
腕の勢いで脚を引きずっていくスタイル。いわば“上半身主導型ラン”。






92.4km
富士河口湖役場駐車場エイドに到着。
そして、私はその光景を見た。
田中くんがエイドで静かに、しかも確実に「×」のジェスチャーをこちらに送ってきている。
手で、バツ印。
「え、なにがあった?」
「脚が上がらないんだよね……」
田中くんはスタート前から脚の不調をこぼしていた。
でも走ってる姿を見かけなかったから、きっと前を行っているのだろうと信じていた。
そんな彼が、ここで止まっているなんて。
「ここまで走っただけでもすごいよ」
そう言った瞬間、田中くんの目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
それを見た私は、もうダメだった。
理性が崩壊した。
まさかのウルトラ男子ふたり、エイドで泣くの巻。
周りのことは気にしていられなかった。
お互い本気でサブ10を目指してきた。
だからこそ、涙が出た。
本気で走ってきた者同士にしか分からない感情が、確かにそこにあった。
しばらく一緒に歩いた。
きっと、レース中にこうして肩を並べて歩いたのは初めてだと思う。
まさかこんな展開になるとは、朝のスタートラインで誰が予想できただろう。
「先に行って」
そう田中くんが言ってくれた時「一緒にゴールしたい」気持ちも確かにあったけれど、私は先に進むことを選んだ。
「ゴールで待ってるから」
そう言って背を向けて走り出した。







94km
超激坂ゾーン
ここからが、富士五湖の最終試練。
3kmに及ぶ“心折設計”の激坂が続く。
走る?無理。
歩く?いや、走る。
気持ちを切り替える。
いけるとこまでとにかく走ってみよう。
すると、まさかのサプライズ応援。
なんと、みゃこさんがいた。
「がんばってー!」
この一言だけで、激坂に立ち向かう勇気が増した。

95.8km
最後のエイド
あの若さんがまたいた。
まさか2度も現れてくれるとは。
「あと少しだよ、がんばって!」
両ふくらはぎにエアーサロンパスを丁寧にスプレーしてくれる。
これが最終奥義「若さんのエアーサロンパス第二弾」。
ラスト5km→4km→3km→2km
ひとつ、またひとつと距離表示が減っていく。
激坂を上りきる。
途中で何度か歩いてしまったが悔いはない。
やりきった感が胸に広がる。
そして、下りへ。
重力が味方してくれる。
脚は鉛のようだが、気持ちは羽のように軽かった。








ラスト1km
旅の終わりが、ついに目の前に現れた。
ああ、ここまで来たのか。
長かったようなあっという間だったような、不思議な時間の流れのなかで私は今確かにゴールへと向かっている。
かつては「100kmを走る」なんて、どこか別世界の出来事だった。
テレビの中とか、雑誌の中の話だと思ってた。
でも今、私はその距離を走り終えようとしている。
そしてただ走るだけじゃなく、タイムに挑んでいる自分がいる。
人生、ほんとうに何が起こるかわからない。
「ミツナガヒロキさん!」
スピーカーから自分の名前が流れた瞬間、胸がじんわりと熱くなった。
今回はサブ10には届かなかった。
でも、それで全てが色あせるわけじゃない。
むしろ逆だ。
限界まで食らいついた時間。
「もうダメだ」と思いながら、それでも足を止めなかった瞬間。
仲間と肩を抱いて泣いたこと。
誰かの言葉に救われたこと。
そのすべてが、宝物のような時間だった。
また来年、ここに帰ってこよう。
今度こそ、壁を打ち破るために。










今回旅をご一緒してくれた皆さま、楽しい時間をありがとうございました。



まとめ
チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン。
100kmを走ったその先に待っていたのは、メダルでも記録でもなくただひとつ、心の底からの「納得」だった。
サブ10には届かなかった。
ぬぐぐ、と唇を噛みたくなる場面もあった。
だけど、それがどうした。
悔しい? そりゃあもちろん悔しい。
でも、それだけじゃなかった。
悔しさを包み込むようにして、嬉しさがあった。
そして、ありがたさがあった。
沿道から飛んできた「がんばれー!」の声。
黙々と走るランナーの背中。
折れかけた心にそっと手を添えてくれた誰かの存在。
それらすべてが、胸の中に今もやさしく灯っている。
本音を言えば、こんな苦しい挑戦、一発で決めたかった。
もういいでしょ、って、心のどこかで思っていた。
ゴール直後は、本気で「二度とやるか」と思った。
でも、時間が経つにつれて思ってしまう。
――たぶんまた、挑戦してるんだろうな、って。
そんな自分のしぶとさにも、ちょっと笑えてくる。
次こそは、サブ10を掴みにいこう。
いや、もう掴みにいっちゃおうじゃないか。
今はそんな気持ちなっているのがまた怖いのです、笑。
次の挑戦は6/8飛騨高山ウルトラマラソンになります。
去年の自分超え?(11:41:38)、サブ10?
どこまで行けるか楽しみです。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
どこかでこのブログが、あなたの背中をそっと押せますように。
おまけ
50km過ぎ
河口湖でしょくぱんまんに扮したツッチーさんが撮ってくれた一枚。

帰りのバスを降りたらガチオさんと遭遇(ONTAKE100に続き2回目の出会い)

ゴール後は気持ち悪くてダウンしていたけど少し休んだら復活。
お寿司とビールで打ち上げ。

道の駅なるさわで富士桜ソフトクリーム。

今回使ったシューズはアシックスのエボライドスピード2。
ウルトラマラソンではエボライドシリーズが走りやすくてとても気に入っています。

最新モデル エボライドスピード3
エボライドスピード2
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